なんで夢なんかもってしまったんだろう
なんで私は、夢なんて持ってしまったんだろう。
沖縄は国際通りの近くに住むアカリは、たくさんの観光客が楽しそうに歩く姿を見ながら、そんなことを思った。
私には、自分の本を出版、しかもそれがバカ売れするという貪欲な夢がある。
半年前、執筆活動のため、東京から沖縄に来た。
探検したり、冒険したり、いろんなことに挑戦して、楽しみながら文章を書いていた。
そんなこんなであっという間に半年が過ぎようとした一週間前。
期限を決めないと、いつまでも一つの形にならんなと思い、友達に期限を決めてもらった。
友達が決めた期間は、「2週間」
————残り14日。
まず、私は、友達との遊びを断り、2週間という時間を本に全力投球させることを決めた。
アルバイトの休憩時間の1時間にも、本の完成に向けてできることをやり始めた。
起きた瞬間から、寝るまで、頭のなかはずっと本だった。
これまで、インスタをちょろっと見ていた時間とか、バイトから帰ってきてだらけていた時間とかを本につぎこめることがわかって、意外に時間はあるもんだなと思った。
————残り5日
ある程度形になってきたところで、もっと良くしていくにはどうしたらいいんだろうと思い、人に読んでもらって、フィードバックをもらうことにした。
人に見せることは、すこし、こわくて、緊張した。いや、「すこし」とは強がった表現かもしれない。生まれたての小鹿が立とうとする時の足の震えくらい、私はこわくて震えていたんだと思う。
良い!アカリ最高だよ!という意見は、かなり嬉しいけど。
「もっとこうしたほうがいいんじゃない」「こういうことは考えて書いている?」
という意見を実際に言われると、結構ダメージがでかい。
「そういう意見こそ、是非聞きたいでごわす!」と、ドM精神で思っていても、実際言われた後は、大抵テンション下がってる自分がいる。
だって、自分の足りていないところや自分の苦手とすることを指摘されるんだからね。
負けず嫌いなアカリは、
おっけーおっけーそうだよねー!ぜんぜんおっけー!やったるわー!ありがとう!!
と言いながら、本当は、傷つきまくって血だらけな自分を無視して、自分を奮い立たせた。
出血多量のまま沖縄で一番大きな本屋さん・ジュンク堂へ向かい、アカリの足りない部分を得意とする人たちの本を読みあさり研究を始めた。
いつの間にか外は暗くなっていた。
「よし、帰るか・・・」
観光客が楽しそうに歩いている。
あかりはふううううううううううううとため息をつき、夜空を見上げた。
空は晴れ渡っているわけでもなく、思いっきり雲がかっているわけでもなく、月は満月でも、新月でもなく。なんというか、ハッキリとしない夜空だった。
なんでわたしは、夢や目標なんて持ってしまったんだろう。
本を書くこと、文章を書くことは好きでやっている。
でも、もし、夢なんかなければ、失敗したり、人に評価される恐怖だったり、惨めな思いも、傷つくこともなかっただろうに。
アカリは帰る前、家の近くにある公園の椅子に座って考えた。
私は・・・知ってしまったんだ。
夢を追いかけること、夢が叶うこと、世の中から何かをもらうだけじゃなくて、自分で考えて工夫して創って何かを提供できることの楽しさや喜びや感動を。
私は、これまで自分のやりたいこと、好きなこと、そしてそれは同時に夢であり———をやってきた。
叶うこともあれば、失敗することもあったけど。
でも。
それが、どんなに楽しくて、どんなに幸せかを知ってしまったんだ。
応援してくれる人への感謝や、温かい気持ちに包まれるってことを知ってしまったんだ。
知ってしまった以上、もう戻れない。
自分が成長したり、夢を叶える過程や叶えたときの喜びや幸せは、辛いことを越えてくることを知っているから。
暗闇の公園で、街灯がアカリを照らしていた。
家に帰ると、夢をもつ同志である親友からライン通話が入った。
「いえーいりんちゃーん!」
親友は、相変わらずのテンションで、思わず笑った。
どうやら、親友は、今やっている仕事の関係で、テレビに出演、人気ユーチューバーの動画に出ることになったらしい。
「えべえよ!りんちゃん!地上波だよ。来週フジテレビ来ちゃうよ!」
これまで、お互いの可能性を信じ、夢を応援しあい、挫折したときには励ましあっていた。そんな親友に、そんな機会がやってきて、本当に嬉しかった。
そして、散々盛り上がった後、私は親友に言った。
「私は・・・今・・・テンション落ちてる時期や。」
これまでの経緯を親友は親身に聞いてくれた。
話をしていると、涙が溢れてきた。
そして、この時初めて、自分が泣きたいくらい血だらけだということに気が付いた。
「おれ、りんちゃんの可能性信じてて、本当に応援してるんだわ。応援者が一人でもいれば、ぜったいにうまくいく。人に、「応援する」なんて、簡単に言えない言葉なんだからね。」
親友は血だらけな私にコトバで止血してくれた。
そして、親友は言った。
「りんちゃんは、自分の書く本が、どういう人に、どういうものが与えられるのか、とかイメージあるの?」
・・・・ない。
ただ、ただ、漠然と自分の思いを書き綴っていた。
「ない・・・」
すると、友人は話し始めた。
「おれ、外国人観光客をガイドする仕事してるじゃん。なんでガイド始めたの?って聞かれた時、最初は『出会いって最高じゃん!』とか言ってたんだけど。(笑) でも、それって、いろんな背景があってさ。
留学に行ったとき、そこで俺は英語だけじゃなくて、コミュニケーションを学んだんだ。どうやったらこいつらと仲良くなれんだろう、とかコミュニケーション学んでたら、いつの間にか英語話せるようになってた、みたいな。俺はそこで学んだコミュ力やまとめる力を、欲しいと思う人に提供できればいいと思って今の仕事やってきた。需要と供給がハッキリしていけばOKだよ。」
————残り4日
次の日、朝起きると、親友からラインが入っており、そこには、本を出版するにあたっての心構えや、やるべきことなど、いろんな情報が書いてあるものを送ってくれていた。
こういう考え方はなかった・・・
私は、それを参考にしながら、自分の提供できること、それをどんな人に提供できて喜んでもらえるのか、など、これまで考えていなかったことをイメージした。
私って、何が提供できるんだろう・・・
なに、元気?勇気?こういう感じしか浮かばないけど?改めて考えてみると、よくわからない。
自分は、需要だけではなく、実は供給もハッキリとしていなかったと気付けた。
私は、オランダに住む親友にラインを送った。
「私の長所ってなにかな、私の提供できることってなにかな」
するとライン電話がなった。
「やっほ~オランダ、今何時なの?」
「深夜2時。」
「えええええ、眠くないの?また今度でいいよ!」
そう断ったが、友人の優しさに甘えることにした。
「アカリさんからね、長所ってなにと聞かれたとき、うーん・・・と思ったんだ。長所って、人と比べてできるとかできないとかそういうことじゃん。
ぼくがアカリさんの好きなところなら言えるけど。僕は、あかりさんの素直なところとか、負けず嫌いなところが好き。
アカリさんがどんなことを書いていようと、それは表面であって、アカリさんの気持ちとか、魂てきな部分に惹かれる。それを、応援したくなる。
うーんだから・・・なんというか、自分の書いている本が、これだ!!!!って納得できれば、いいんじゃないかな。今のアカリさんはどう?」
「これだ!とは思えてない。これだ!的な感じで魂震える作品、形にはなっていない。」
「だったら、自分の信じるものを突き詰めていってみたら?人の意見も大切だけど、アカリさん抜きに、アカリさんの作品てのは存在しない。まずは、アカリさんがこれだ!っていうものを、突き詰める。表現する。自分と向き合う。」
確かに、私は、自分と向き合う時間をショートカットしようとしていたかもしれない。それは、時間も手間もかけずに楽をしたい、楽をして夢を叶えたいという潜在的欲求。それが、早く本を完成させたい、という焦りになっていた。でもそれは、自分にとことん向き合うめんどくささから逃げようとしていたのかもしれない。確かに、期限を決めて、ひとつの形にしようとしたことは、大きく物事を進めてくれた。でも側だけ進んだところで、大事なことが置き去りにされて、心が伴ってない感覚だった。
「今回、アカリさんは、期限というものを作って、本を完成させるという新しい挑戦をした。そして、そのなかでいろんな葛藤がでてきたけど、新しい気付きをたくさん得たよね。」
たしかに・・・新しいことに挑戦する————それは、世界一周します!とか、そんな大きなことでなくても、今やっていることの、これまでのやり方を変えてみたりすることでも、新しい側面は見つけられるんだ。
「期限内に無理に形にしようとしなくてもいい。人の心を動かすか否か、それも大事だけど、まず自分が信じるものを出せるか否か。自分が、これだ!って信じるものを、アカリさんの気持ちを大切にしてほしい。」
そんなこんなで、友人は、深夜2時から一時間、私を励ましてくれた。
「いやあ~。アカリさんも生々しい悩みをもっているんだね。」
「もってる~☆もってる~☆昨日ね、なんでわたしは夢なんか持ってしまったんだろうなんて思ってた~☆うけるよねー!(笑)(笑)」
この☆←星は、強がりでもなんでもなくて、親友のおかげで本当に元気が出てきてついたものだった。
そう言うと、突然友人が言った。
「んもう、やばーーーーーーーーーーーいい。アカリさんと結婚したーい!!!」
・・・・は?(笑)
ただ、笑うしかなかった。
「殺し文句だよね~。」
だめだ、余計に意味がわからない。
「『なんで夢なんか持ってしまったんだろう』そういう言葉がでるほど、生きているって感じの人、そういうことを言っている人がいるということが、とても嬉しいんだよね。そういう人ほど、綺麗な景色を見てほしいと思うっていうか、夢が叶ってほしいと思うし、できることをお手伝いしたいと思うんだよね。」
「ありがとう。なんかさ、幸せだよ。こんな夜遅くに話聞いて、いろいろ考えてくれる人がいてさ。」
「アカリさんのためなら100万馬力だよ」
友人は意味不明なことを言っていたが、100万馬力で(?)嬉しかった。
自分の中に、今、正解はない。
でも、こうやって悩んでいることも、自分の夢を叶える道のりとなっていることは、なんだか妙に確信していて、
この悩みや、気付きを綴りたいと思い書いてみた、そんないちブログの投稿でした。
なーんか、くさい(笑)
なーんか、25歳の女子が
なんで夢をもってしまったんだろう、とか、くさい。(笑)
なんか・・・恥ずいな(笑)
とりあえず、沖縄の大自然の写真を付け加えます(笑)